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ソーシャルメディアを活用した諏訪地域観光PR事業におけるインタビュー「諏訪の夏を世界へ。SNSでつなぐ、地域の魅力発信プロジェクト」

2025.07.10

長野県の中でも豊かな自然や文化が息づく諏訪地域は、観光資源に恵まれていながらも、宿泊者数の少なさやインバウンド誘客の弱さといった課題を抱えていました。そうした状況を打開すべく、長野県諏訪地域振興局では、SNSやインフルエンサーを活用した新たなプロモーションとして、地元事業者との丁寧な連携を図りながら、地域のリアルな魅力を国内外に発信するプロジェクトを実施しました。今回は、本取り組みの背景や成果、そして今後の展望について、商工観光課の高遠氏に詳しくお話を伺いました。

目次

1.諏訪地域における観光の現状と、インバウンドを意識した新たなプロモーション

この事業を立ち上げられた目的や背景を教えてください。

諏訪地域は首都圏に近接する立地にあり、観光地として多くの方に訪れていただいています。しかしながらそのうちの約7割が県外からの日帰り利用にとどまっており、地域としては「滞在してもらう観光」の促進が求められていました。

また、インバウンドの観点でも、県内の他地域と比べると外国人旅行者の宿泊数が少ないのが現状です。こうした背景から、国内外問わず諏訪地域に「来てもらう・泊まってもらう」機会を増やすべく、今回Japan Naviさんにご協力いただき、ソーシャルメディアを活用したプロモーション事業を実施することになりました。

令和6年度は「情報発信」を重点に取り組み、まずは多くの方に地域を知っていただくことを目指しました。

ターゲットについては、訪日経験があるインバウンドと設定しました。諏訪地域には、複数回日本に訪れており、東京や大阪はもう行ったという方が2度目以降の訪日で来訪する傾向があります。そこで、地域に古くから残る文化・伝統に興味を持ち、体験してみたいと感じている方に届く内容を考えました。まずは訪れてもらうこと、そして滞在へとつなげていけるような情報発信や仕組みづくりを目指していました。

2.情報発信が実を結び始めた事例と地域への反響

実際インフルエンサーを起用して活動された成果を教えてください。

もっとも実感を持てた成果の一つは、インフルエンサーのチージーさんに投稿いただいたリール動画の再生数が非常に多かったことです。特に、昔ながらの暮らしや風景が残る山里に佇む一軒家で、日本の暮らしを体験する「ヤマウラステイ」の動画は、私たちの想定を大きく上回る反響があり、なんと333万回(2025年5月現在)も再生されました。多くの方に諏訪地域の魅力が届いたことをうれしく思っています。

また、ある宿泊施設ではこれまで来訪のなかったシンガポールからの予約が入るなど、実際の来訪にもつながり始めているという声も届いています。旅行を計画する際にSNSを参考にする方が増えている今、こうした取り組みが実際の集客にも結びついていることを実感しています。

チージーさんのインスタグラム

3.地域の事業者と共につくる情報発信のかたちとその成果

地域の方との連携はすごく大切だと思います。今回その地域の事業者さんや観光関係者の方との連携で心がけたことはありますか。

はい、今回の取り組みにおいて最も大切にしたのは、事業者の皆さん一人ひとりの現状や想いをしっかりと尊重することでした。諏訪地域と一口に言っても、場所によって観光客の傾向や受け入れ体制は異なります。そのため、現場の状況と乖離した内容を発信しないよう細心の注意を払いながら、地域の魅力を丁寧に伝えることを心がけました。

また、情報発信の際には、各事業者さんの希望やこだわりを伺いながら進めました。担当の渡邊さんからも事前に細かく確認をとっていただき、表現や構成についても一緒に打ち合わせを行いました。それにより、事業者さん自身のブランドや思いをできるだけ損なうことなく、共に形にしていくことができたと感じています。

発信後には、動画の再生数の多さについて喜びの声をいただくこともありました。

また、1月にはジャパンナビの渡邊さんとインフルエンサーのチージーさんをお招きし、情報発信に関するセミナーも開催しました。その中で「情報発信は質より量が大事」という実践的なアドバイスがあり、多くの事業者さんにとって新しい視点や気づきとなりました。

結果として、インバウンドに限らず、観光に関わる方々の意識に変化が生まれ、前向きな動きにつながったと感じています。

「どのように発信したらいいのか悩んでいたが、今回の取り組みがヒントになった」といった声もいただき、地域の課題解決に向けた一歩になれたのではと考えています。

4.外からの視点で気づく、地域の“当たり前”の魅力

今回、SNSを活用した発信において、地元では当たり前に感じている景色や体験が、外から見ると新鮮に映る場面もあったかと思います。そうした「外からの視点」について、感じたことや地域内での変化はありましたか?

はい、今回の取り組みの中で特に印象的だったのは、チージーさんにご紹介いただいた「ヤマウラステイ」の動画が非常に好評だったことです。私たちにとっては日常にある風景や体験が、海外の方にとってはとても魅力的に映るということを、改めて実感するきっかけとなりました。

観光振興を進める中で、こうした“外からの視点”を持って取り組むことの重要性を再認識しています。ただ、地域内にいると、そうした視点に気づきにくいものなので、どのようにして今ある魅力を発掘していくかは課題に感じています。

5.今後のPR戦略と地域事業者への伴走支援の方向性

今回のプロモーションで得られた気づきや成果を、今後のPR活動にどのように活かしていこうとお考えですか?地域や事業者への支援、また今後注力されたいターゲットについても教えてください。

今後は各事業者さん自身が発信していくことを見据えています。それぞれの事業者さんには独自の色やこだわりがあり、実際にそうしたこだわりが外国の方に響いた例も見られました。だからこそ、今後はそれぞれの強みを活かした発信ができるよう、必要に応じて私たち行政も引き続きサポートしていきたいと考えています。課題があれば一緒に解決できるような伴走型の関わり方を意識しています。

また、観光消費額の向上とあわせて「滞在型観光」の促進に力を入れていきたいと考えています。今回は夏の諏訪を発信いただきましたが、特に集客が落ちがちな冬の時期には、冬の夕食や景色など、諏訪ならではの魅力を発信していく予定です。

今後のプロモーションのターゲットとしては、引き続き「シンガポール」に注目しています。シンガポールでは6月と12月に長期休暇があり、その時期に海外旅行をされる方が多い傾向にあります。特に諏訪地域では冬期(12月頃)の集客が課題となっているため、都市部(東京・大阪・名古屋)を訪れるシンガポールの旅行者に、諏訪にも立ち寄っていただけるような動機付けに取り組んでいきたいと考えています。

6.冬の魅力と地域のつながりを活かした体験型プロモーション

諏訪地域は冬の観光も楽しめそうですが、どのような魅力や工夫を通じて冬季のプロモーションをお考えですか?また、地域の方との交流や体験型コンテンツについてもお聞かせください。

諏訪地域の冬は非常に寒くはありますが、雪があまり降らないため、いわゆるスキーリゾートのような楽しみ方とは少し違います。ただ、例えば諏訪湖が凍る景色や、寒さを活かして作られる寒天といった特産品など、寒さから生まれた独自の文化があるのが特徴です。そうした冬ならではの魅力を発信することで、共感してくださる方々に訪れていただけたらと思っています。

また、地域の方との交流を通じた“体験”の価値も、今後さらに注力していきたいポイントです。インフルエンサーのチージーさんからも「人とのつながりが大事」といった声がありましたが、都会ではなかなか味わえない地域とのつながりこそが、諏訪の強みになると感じています。

実際に、地域の文化や日常を活かした体験型コンテンツを提供している事業者さんもおり、独特の風習や暮らしの中にある面白さを体験として届けられる環境が整いつつあります。こうした体験を通して、訪れた方により深く諏訪地域を感じていただけるような取り組みを今後も進めていきたいと考えています。

ⓒ長野県諏訪地域振興局

7.協業による成果と、継続的な観光振興に向けた展望

今回のプロジェクトを通じて、Japan Naviとの協業における印象や感想、また今後に向けた展望についてお聞かせください。

今回のプロジェクトにおいて、JapanNaviさんには非常に迅速かつ柔軟にご対応いただき、大変感謝しています。私たち行政の立場や意図をしっかり汲み取っていただき、実行まで丁寧にサポートしてくださったことが印象的でした。特に担当の渡邊さんとのやり取りでは、レスポンスが非常に早く、進行に不安を感じることはまったくありませんでした。

また、アンケート調査の実施に際しても、目標のサンプル数に合わせた広告展開など的確な対応をしていただき、成果に直結した取り組みだったと思います。地域の事業者との連携や情報の確認など、丁寧な調整と実行により、プロジェクト全体を通して非常にバランスの取れたサポートをしていただけたと感じています。

実際の成果としても、リール動画の再生数が大きく伸び、シンガポールからの予約増加など、具体的な来訪につながった施設も出てきています。こうした手応えのある結果が見えたことは大きな意義があり、これを一過性で終わらせず、今後も継続的な観光消費額の向上につなげていきたいと考えています。

今後は、観光の弱点とも言われる「冬の時期」の魅力をどう打ち出すかが一つの課題です。先ほどのとおり諏訪の冬は非常に寒いですが、雪は少なく、晴天が多いという特長があります。この点をいかした特産品等諏訪の独特の地域文化とその魅力をもっと発信していければと思っています。

■まとめ

今回の取り組みを通して、地域の皆さまが日常の一部として大切にされている風景や文化が、外からの視点ではとても新鮮で、心に残るものであることを改めて実感しました。特に、「諏訪湖の夏の自然や糸繰り、日本庭園でのお抹茶体験」など、地域文化とのふれあいに、国内外から反響があったことは、大きな成果の一つだと感じています。

今後は、こうした地域ならではの魅力をさらに掘り下げ、冬季のプロモーションや滞在型観光の推進へとつなげていきたいと考えています。

Japan Naviの地方創生は、地域の想いに丁寧に寄り添いながら、地域と世界をつなぐ架け橋として、その役割を果たしてまいります。

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